えほんの本棚

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【レビュー】にぐるまをひいて:ドナルド・ホール

 

 

 

働くこと、ものを作ること、商売をすること、お金を使うこと。

わたしたちの生活の多くは、すでにいろいろな仕事を機械に任せていたり、わざわざ何かを作って、売って、物を買うなんて手順を踏まなくなってしまったけれども、「にぐるまをひいて」を読むと、人の生活サイクルがしっかりと見える。それはとてもシンプルなもの。

 

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とうさんにはとうさんの仕事が、かあさんにはかあさんの仕事があります。娘は指なし手袋、息子はしらかばのほうきを作ります。そして、家族みんなで作ったものもたくさんあります。

 

10月になると、みんなが作ったものを、牛が引くにぐるまに乗せて、とうさんは10日間、ポーツマスの市場へ出かけて行きます。

 

そこでとうさんは、次々ものを売ります。面白いことに、ほんとうに全部売ってしまうのです。ちょっと切ないけど、牛もね。そしてまた家族のもとへ戻り、いつもの生活に戻るのです。

 

家族の住んでいる自然豊かな村。農作物も、家畜も人間が生きていくために働いています。まさに、家族、動物総出で淡々と役目をこなす毎日ということが分かります。いちにち、一週間、一年間、小さなサイクルを刻みながら慎ましやかに生きる。

 

新しく買ったなべで作る夕飯、とうさんが買って来たはっかのキャンディが、この家族の幸せの象徴のように思えます。

 

そしてまた新しいサイクルがはじまります。家族もまた淡々と自分の仕事をこなします。

 

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挿絵はバーバラ・クーニーさん。2頁にわたる風景画、お父さんがテクテク歩いて行く道のりがどんなに遠いか がよくわかる。また、豊かな色彩で描かれた四季の変化も美しく表現されています。

 

 

にぐるまひいて

 

 

 

にぐるまひいて

にぐるまひいて

 

 

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