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【感想・あらすじ・レビュー】字のないはがき:向田邦子、角田光代、西加奈子

 

 

字のないはがきのレビューです。

 

字のないはがき

 

感想・あらすじ

向田邦子、角田光代、西加奈子 、大好きな作家の名前が並ぶ。

3人が一緒に作る本ってなると、どういう感じになるのだろう?と、ちょっとドキドキしましたが、なんと絵本!原作、文、絵と、それぞれ分担され一冊になったという絵本です。そういえば、このちょっとゴツゴツしたクレヨン画、西加奈子さんですよねぇ~~。

 

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はじめての手紙、葉書を書いたのは何歳くらいの時だっただろうか?ちゃんと届くだろうか?受け取った人はどう思うか?返事は来るかな?などなど、ドキドキしながら送ったことだろう。そう、こどものとき、はがきを書いたり貰ったりすることは、とても楽しいと感じるものだった。

 

でも、このはなしではちょっと違う。

小さな妹は家族と離れ、疎開することになった。お父さんはたくさんのはがきに住所を書いて妹に渡します。まだ字の書けない妹。お父さんは元気なら『〇』を書いて出しなさいと。

 

 はじめて書くはがきは命の確認をするものであったなんて。

それでも妹にとって、はじめは楽しかったのでしょう。はがきいっぱいに大きな〇を書いて送ります。やがてその〇はどんどん小さく書かれ・・・。

 

 

 

 

 

 一枚の字なのないはがきが運んでくるものは、字のあるはがきよりずっと妹の様子が感じ取れ、何とも言えない息苦しさを感じました。受けっ取った父親、家族がどれだけ歯がゆい思いをされたことか。

 

戦争は、はがき一枚とっても、人々にこんなにも苦しく、辛い思いをさせるものであったことが分かる。日常のほんの些細なわたしたちの楽しみをも、戦争は人を苦しめるものに変えてしまう。

 

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原作は向田邦子さんのエッセイ。

それを角田光代さんが、文章を書きながら、絵を見ながら、校正をしながら、そのたびに涙が止まらなかったそうです。 (紹介文より引用) 

このえほんについて

このえほんは教科書にも載っている実話なんだって。アニメにもなったそうよ。有名なお話なんだね。向田さんのお父さんがどんな人で、どんな気持ちではがきを書いていたのか。そして家族の絆。そのあたりを感じながら読んでみてね。

出版社 小学館

発売日 2019/5/22

ページ数 32ページ