字のないはがきのレビューです。
感想・あらすじ
向田邦子、角田光代、西加奈子 、大好きな作家の名前が並ぶ。
3人が一緒に作る本ってなると、どういう感じになるのだろう?と、ちょっとドキドキしましたが、なんと絵本!原作、文、絵と、それぞれ分担され一冊になったという絵本です。そういえば、このちょっとゴツゴツしたクレヨン画、西加奈子さんですよねぇ~~。
***********
はじめての手紙、葉書を書いたのは何歳くらいの時だっただろうか?ちゃんと届くだろうか?受け取った人はどう思うか?返事は来るかな?などなど、ドキドキしながら送ったことだろう。そう、こどものとき、はがきを書いたり貰ったりすることは、とても楽しいと感じるものだった。
でも、このはなしではちょっと違う。
小さな妹は家族と離れ、疎開することになった。お父さんはたくさんのはがきに住所を書いて妹に渡します。まだ字の書けない妹。お父さんは元気なら『〇』を書いて出しなさいと。
はじめて書くはがきは命の確認をするものであったなんて。
それでも妹にとって、はじめは楽しかったのでしょう。はがきいっぱいに大きな〇を書いて送ります。やがてその〇はどんどん小さく書かれ・・・。
一枚の字なのないはがきが運んでくるものは、字のあるはがきよりずっと妹の様子が感じ取れ、何とも言えない息苦しさを感じました。受けっ取った父親、家族がどれだけ歯がゆい思いをされたことか。
戦争は、はがき一枚とっても、人々にこんなにも苦しく、辛い思いをさせるものであったことが分かる。日常のほんの些細なわたしたちの楽しみをも、戦争は人を苦しめるものに変えてしまう。
************
原作は向田邦子さんのエッセイ。
それを角田光代さんが、文章を書きながら、絵を見ながら、校正をしながら、そのたびに涙が止まらなかったそうです。 (紹介文より引用)
このえほんについて
このえほんは教科書にも載っている実話なんだって。アニメにもなったそうよ。有名なお話なんだね。向田さんのお父さんがどんな人で、どんな気持ちではがきを書いていたのか。そして家族の絆。そのあたりを感じながら読んでみてね。
出版社 小学館
発売日 2019/5/22
ページ数 32ページ